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井波の紹介

野原博史さんの井波物語

井波物語井波でお寿司屋さんを営まれる野原博史さんが、
井波の歴史を紹介する「井波物語」です。

文:野原博史さん(美好寿司
挿絵・イラスト:藤井治紀さん(砺波市)
デザイン・編集:薮道子さん(砺波市)

【その三】木遣り歌・名工たちの隠された足跡

木遣り歌名工たちの隠された足跡
こちらからダウンロードも出来ます(3.76MB)

木遣り歌

井波では、毎年七月下旬の太子伝会で木遣り町流しが行われます。瑞泉寺の山門
に五箇山地方で育てられた襷の大木を献木する時の歌です。太子伝会でいただいた
団扇にもその歌詞が載っています。少し詳しく調べてみました。

それ栴檀せんだんニ葉ふたばにて。 おそろしき伊蘭樹いらんじゅの。

はげしきどく消滅しょうめつし。崑崙山 こんろんざんとくとして。

いしてんじて黄金こがねとす。琥珀こはくとくちりい。

磁石じしゃくてつならい。山木石さんぼくせきたぐいすら。

約束やくそくたがわねば。いわんやふかちかいある。

無碍光如来むげこうにょらい名號みょうごうは。無量生死むりょうしょうじ罪消つみきえて。

逆悪摂取ぎゃくあくせっしゅう利益りやくある。うたがいのあるべきや。

五濁悪事ごじょくあくじ悪世界あくせかい濁悪邪見じょくあくじゃけん我等われらには。

かの名號みょうごうあたえてぞ。すくいましますしるしには。

深山みやまおく埋木うもれぎも。井波御坊いなみごぼう材木ざいもくと。

ださるゝ不思議ふしぎさよ。

栴檀

瑞泉寺聖徳太子八幅の御絵伝 『二十四才、霊木漂着』 に出てくる香木。 推古天皇三(五九五)年三月に、淡路島に珍しい香木が流れてきた。炊くと大変いい香りがするので聖徳太子に献上したところ、太子は 「これはインドにある栴檀という香木である。 インドの神が日本に仏教が栄えたのを悦んで送り届けたものであろう」と大変喜ばれたという。早速百済から来た仏師に観音像を刻ませ、現在は吉野の比曹寺に安置されている。

名も恐ろしき伊蘭樹の。劇しき毒

伊蘭は草木であるが、インドの南の熱帯地域では栴檀の香木になることもある。 その猛毒は、双葉を誤って食べると発狂して死ぬほどだといわれる。

崑崙山

中国中央に位置する標高五〜七千メートル級の山脈で、日本列島と同じくらいの長さがある。

琥珀

松など植物の樹脂が長い年月の間に固化した宝石。金色と茶色が混じったような神秘的な光を放ち、宝飾品として珍重されている。バルト海に面したリトアニア、ラトビアが世界的な産地だが、日本では岩手県久慈市、千葉県銚子市でわずかながら産出される。

山木石

古い木または化石化した木のこと。あるいは高名な香木「蘭奢待(らんじゃたい)」を指すか? 蘭奢待は六十一種あるといわれる香木のうち第二位とされ、聖武天皇が所有していたといわれる。 皇室が所有する御物(ぎょぶつ)として代々受け継がれ、現在は正倉院で保管されている。

無碍光如来

仏語で華厳経(けごんきょう)にある言葉。あますことなく光を照らしている 〈仏光〉 奈良東大寺の大仏=慮舎那仏(るしゃなぶつ)

五濁悪事 ・ 濁悪邪見の我等には。かの名號を与えてぞ。救いまします〜

かの無碍光如来の名号を与えてくださり、悪世界から救われた。

名工たちの隠された足跡

 瑞泉寺を散策すると、いくつかの動物の彫刻に出会う。

 山門には上に四体、正面入口に一体の龍がある(前川三四郎作・伝)。そのうち髭のあるのは、山門表正面の軒下にある唐上龍波彫と、上の正面右隅にある龍だ。これらの龍には目が入っていない。ところが山門の他の三角にある龍には、髭がない代わりに眼が入れてある。このことは何を意味しているのだろう。作者の深い思いが暗示されていると読み解くのは考え過ぎだろうか。

 また勅使門には「獅子の子落とし」という有名な木像がある(九代番匠屋七左衛門作)。この獅子の子供たちは滝から落とされた後、どうなったのだろう。寓話とはいえ、長年気にかかることの一つである。

 ちなみに瑞泉寺の築地塀(公家など位の高い身分の人の屋敷に見られる五本線のある塀)の左右には、阿獅子・畔獅子が守り神として置かれている。東大寺南大門の内側にも左右に「阿」だけの狛犬が置かれていることを考えると、寺院の獅子も特別なものではないらしい。

 龍にしろ子獅子にしろ、古代の名工たちはこの動物たちに瑞泉寺を託す一方で、自らも楽しみながら木を彫っていたのではないだろうか。

 そもそも狛犬は、エジプトのスフィンクスが起源である。シルクロードにより東国へと伝来し、ローマではライオン像、中国では獅子、日本(沖縄)ではシーサー…と姿形を変えながら各国の守り神となってきた。関西地方では、江戸末期から明治初期まで、子供の誕生祝いにユニークな狛犬の焼物を贈られていたそうである。井波では、男子には天神様、女子にはおひな様を贈る習慣がある。

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